
20年来、スタントン・バレットは世界で最も敬愛されるレース「インディアナポリス500」通称「Indy500」に出場することを夢見ていた。
5月17日(日)、スタントンは自己ベストタイムをマークした。直線距離で時速226.978マイル(=365.3 km)、スピードラップは時速219.597マイル(=353.4km)。1周あたりのタイムは40.9841秒。これは前回のIndy500であれば、楽々予選をクリアできたスピードだった。 しかし2009年Indy500に出場するには、あと0.365秒速く走らなくてはならなかった・・・。
第97回目のIndy500予選では37人のレーサーたちが33つの出場権をかけて闘った。スタントンと他3名は、残念ながら出場することが出来なかった。チーム3Gのエンジニアたちは最後の最後までほんのわずかでもタイムを縮められるようにマシンの調整・変更をしたが、スタントンが何よりも欲しかったIndy500に出場するために必要な、ほんのコマ一秒のタイムを縮めることが出来なかったのだ。
この2週間、スタントンは毎回着実にスピードを上げながら387周を走った。スタントンのベストタイムである時速219.597マイル(=353.4 km)は過去5年のIndy500であれば楽々と決勝に進めるタイムだったし、全97回中91回ものレースで可能であった。しかし、今年のレースでは難しかった。
予選レースが終わったあと、Indy500のCEOトニー・ジョージ氏がチーム3Gのガレージに現れ、スタントンが新人として果敢にレースに挑んだ姿を評した。

スタントンは今までIndyCar市街地コース2試合(フロリダのセント・ピーターズバーグとカリフォルニアのロングビーチ)とカンザススピードウェイで本戦に出場している。2009年にはカナダでの2レース、日本での1レースを含め、あと14レースあり、スタントンはそれら全てに参戦予定である。そして2010年は、もちろん初のIndy500に出場するつもりだ。
スタントンは初めてのIndy500に挑戦した3日後、いつものように飛行機に乗りノースカロライナ州・シャーロットでの2009年3試合目のNASCARレースに向かった。

IndyCarとNASCARにはマシンの見た目の違いと同じくらい技術的な違いもある。スピードの違いはもちろんだが、IndyCarは空気力学上、車体に4,000ポンド(約1,800キロ)のダウンフォースがかかるようになっていて、1,000ポンド(約450キロ)のダウンフォースしかかからないNASCAR車に比べて高速のままカーブを切れるよう設計されている。IndyCarは650馬力のホンダV-8高性能エンジンを搭載して車体重量は1,565ポンド(約700キロ)、対して750馬力のシボレーV-8エンジンを搭載したNASCARは、IndyCarの重量のほぼ倍の3,400ポンド(約1,500キロ)。2つのレースには、こういった大きな違いがあるため、レーサーの中でIndyCarとNASCARの両方に挑戦しようとする人はめったにいないのだ。
スタントンはNASCARに戻り、とても素晴らしいレースをした。プラクティスでは、クラッチがやや滑ってシフトチェンジがすぐに出来なかったものの、ラップスピード時速177.842マイル(286.2 km)で一周のタイムは30.364秒。これは首位のカール・エドワードよりたった0.688秒遅いだけだったのだ。スタントンは他の22人を抜いて26位につけた。プラクティスの後、チームはすぐにトランスミッションとクラッチを換え、クラッチ滑りに対応した。

土曜の午後、新しいセッティングを試すことは出来ないままだったが、スタントンは果敢にも参戦。ドライバー50人中11位という結果を残して予選通過した。他の名だたるチームの車を抜きさり、RWRレーシング・サークルK・インターラッシュチームの車が前方に躍り出たのだ。これにはクルーたちも喜び、午後7時半から始まる300マイルレースでも好成績が期待できると興奮した。
300マイルレースは雨のために1時間ほど開始が遅くなった。スタントンはスタートと同時にラップスピードで時速175マイル(280キロ)を出し、全てがうまくいっているように見えた。・・・最初のピットストップをするまでは。ピットストップで担当していたクルーは、ドライバーやクルーチーフが期待していたような仕事を出来なかったのだ。ピットに入るたびに、貴重な時間が失われた。結局レースは雨が降り出したため、予定よりも30周早めて終わってしまい、スタントンは25位という結果になった。しかしながら、レースを重ねるたびに速く走れるようになってきていることに「トップ10でのフィニッシュもすぐそこにある」と、チームは大いに沸いた。
翌日日曜の朝早くスタントンはIndy500 の会場に戻り、インターラッシュのマーティ・マシューズとタッド・ミツイシと共に観客として世界的なレースの祭典を楽しんだ。もちろん「来年こそ、世界のベストレーサーたちとこの場で戦うぞ」と心に決めながら・・・